小学部だより
小学部だより 2024年10月号
小学部だより
〜琵琶湖より愛をこめて〜
イエスは「わたしについて来なさい。人間をとる漁師にしよう」と言われた。
二人はすぐに網を捨てて従った。(マタイ4章19節〜20節)
「なんで滋賀県やねん?」修学旅行が関西、それも滋賀県に宿泊すると聞いた時に最初に出てきた言葉でした。きっと、大方の関西人も同じような反応になるでしょう。京都人が「滋賀県は琵琶湖ばっかりで、ほとんど琵琶湖やん!」と滋賀県民を揶揄すると、「そんなこと言うんやったら(琵琶湖の)水、止めたろか!」と応戦する、昔ながらのお決まりのジョーク。英和の修学旅行は京都、奈良も行くけど、どうして滋賀県なんだろう……?コロナが収束し、私にとっても今年で3回目となる修学旅行は、改めて滋賀県を拠点としたプログラムの意義とその素晴らしさを実感するものとなりました。プログラムの詳細は別項に譲るとして、現在の東洋英和女学院小学部の修学旅行の拠点が琵琶湖に定められたのは、なんといっても William Merrell Vories(ウィリアム・メレル・ヴォーリズ)という人物の魅力に他なりません。ヴォーリズは 1880 年米国生まれのプロテスタントの信徒伝道者であり、多くの西洋建築を手がけた建築家、社会事業家、ビジネスマンという多彩な才能の持ち主でした。特に建築家として日本全国に約 800 あまりの建物を残しましたが、私たちにとっては、建て替え前の東洋英和中高部校舎の設計者としても馴染み深い人物であります。彼は 24 歳の時に滋賀県の近江八幡の商業高校に英語教師として来日しました。あまりに熱心な伝道活動ゆえに、2 年で解雇されてしまいます。失意のなか、キリスト教の伝道を続けるために請け負ったのが、京都での建築の仕事だったそうです。その後は輸入品販売の会社(近江兄弟社の前身)を設立し、メンソレータム(塗り薬)で成功し、病院や学校なども経営します。ヴォーリズは教職を解雇されたのち、導かれるように始めた建築という仕事によって、今も東洋英和とのつながりを持つことになりました。彼はその自叙伝の中で、「神の計画の不思議さを思わされる。」と綴っています。先日の修学旅行では、ヴォーリズの愛した近江八幡の街並みを感じながら、小舟に乗って水郷めぐりを楽しみ、若き日にガリラヤ湖のように感じたという美しい琵琶湖の湖畔で礼拝を守りました。京都では現存するヴォーリズ建築として最も古い教会である京都御幸町教会を訪れ、ヴォーリズ建築の根底にある、人を思う気持ち、住まう人への愛に溢れた建築に触れることができました。最終日のランチは、ヴォーリズ建築の老舗レストランとして有名な「東華菜館」(日本で一番古いエレベーターがあることでも知られる)で。ここでも支配人の方から子どもたちにヴォーリズ建築の魅力とは、「使う人の立場に立った設計、他者への気遣いが随所に感じられる建築設計である。」と教えていただきました。ヴォーリズ建築の特徴はその建物の機能性や美しさと共に、温かみや居心地の良さにあると言われています。自らの建物についての解説をすることが少なかったヴォーリズですが、彼は自身の作品を通して、「神の国の居心地の良さ」を伝えようとしていたのかも知れません。学校も家庭も、地域社会も、子どもたちの生きるこれからの世界が居心地の良い場所になりますように。
『建物の品格は人間の人格の如く、その外観よりもむしろその内容にある。』
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
小学部長 𠮷田太郎
小学部の様子をご覧ください!
6年生 修学旅行(滋賀県・京都府・奈良県)