小学部だより
小学部だより 2026年6月号
小学部だより
〜一人ひとりを大切にする〜
娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。
(ルカによる福音書 8 章 48 節)
聖書には、大勢の群衆の中で、長患いの一人の女性をイエスさまが立ち止まって見つけ出される場面があります。「長血の女」と聞くとピンと来る方も多いのではないでしょうか。多くの人に囲まれていても、イエスさまは「誰か」ではなく、「あなた」を見つめてくださいます。そして、「あなたは大切な存在である」と語りかけられます。このまなざしこそが、キリスト教教育の原点だと言えるでしょう。福音書によりますと、この女性は 12 年間もの長い期間、出血が止まらない病気だったと書かれています。いわゆる婦人科系の疾患であったのかもしれません。2000 年前のユダヤの社会では病という苦しみだけではなく、血というものが忌避されていたことから、彼女はコミュニティから遠ざけられ、排除されるという悲しみの中にありました。そんな彼女が、イエスさまを信じて、一縷の望みをおいてその衣に触れようと、群衆の中を潜り抜けるように近づいた。その信仰をイエスさまは受け止め、「娘よ」と呼びかけられました。病人としてではなく、穢れた人としてでもなく、娘、家族として呼びかけてくださったのでした。
私たちは日々の教育の中で、「一人ひとりを大切に」と繰り返し語ります。それは、子どもたちが皆同じだからでも、能力や成績によって価値が決まるからでもありません。聖書は、すべての人は神に愛されているがゆえに尊い存在であると教えています。神さまは人を分け隔てなさらず、一人ひとりをかけがえのない存在として受け入れてくださいます。この人間観こそが、「敬神奉仕」を学院標語に掲げる東洋英和の教育を支える土台です。子どもたちは学校生活の中で、友だちと喜び合う日もあれば、自分の思い通りにならず悩む日もあります。そのような毎日の中で、「困っている人はいないだろうか」「一人になっている人はいないだろうか」と周囲に目を向けることのできる子どもへと育ってほしいと願っています。自分が大切にされていることを知る人は、他者を大切にすることができます。自分が受け入れられていることを知る人は、違いを持つ人を受け入れることができます。私たちを取り巻く社会では、相手の違いを指摘し、自分の正しさだけを主張しようとする風潮が強まっています。しかし、学校は「誰が正しいか」を競う場所ではなく、互いの違いを認めながら共に成長していく共同体でありたいと願っています。そのためには、相手を理解しようとする心、寛容さ、そして互いを尊重する姿勢が何よりも大切です。このような時代だからこそ、私たちキリスト教学校は、いのちに寄り添い、平和をつくる人を育てるという使命を大切にしていかなければなりません。東洋英和女学院小学部が育てたいのは、優秀さよりも、他者と共に生きる人格です。単に知識や能力に秀でた人ではありません。神に愛されていることを知り、その愛を隣人へと分かち合うことのできる人です。そのような人格こそが、変わりゆく時代にあっても揺らぐことなく、人と人とを結び、社会に平和の灯をともしていく力になると信じます。
小学部長 𠮷田太郎
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