小学部だより
小学部だより 2024年5月号
小学部だより
「愛餐」とは
「主イエスは、引き渡される夜、パンを取り、感謝の祈りをささげてそれを裂き、『これは、あなたがたのためのわたしの体である。わたしの記念としてこのように行いなさい』と言われました。」
(コリントの信徒への手紙一 11章24節)
東洋英和女学院小学部に奉職させていただき3年目の春を迎えました。これまでのお支えに感謝致します。さて、頻繁に来訪者がお見えになりますが、その際に私が学校の中をご案内することがあります。ご案内コースとしてはまず、講堂。敬神奉仕のプレートが掲げられた入り口から照明のスイッチを入れると、真っ先にどなたも立派なパイプオルガンに目が止まり、全校児童が集い礼拝や鑑賞会、学芸会や講演会などを行なっていることをお伝えします。次に階段を上がって、食堂へご案内します。ここでも、ほぼ全員が食堂の広さ、明るさに感嘆されます。「毎日、全校児童が揃ってここで食卓を囲むのですよ。」普通の給食ではなく、みんなで揃って、みんなでお祈りをして、一緒にいただく英和ならではの給食スタイルをご説明します。「えっ?それって大変じゃないですか?」というのが大方の反応。「はい、これはものすご〜く大変な方法だと思います。」と私は返答します。英和の給食のスタイルは栄養士さんをはじめ、食堂の調理さんなどのご負担を考えると、とても非効率で手間とコストのかかる方法です。しかし、小学部は旧来からのこのスタイルをとても大切にし、守ってきました。「デザートを必ず一品」これもこだわりの一つだと聞いています。私なんかからすれば、「1日くらいデザートが無くたっていいんじゃないの?それよりも満腹になる炭水化物をドーンと盛ったらどうかしら?」などと考えてしまうのですが……、3年目の春、なんと浅はかな考えだったかと我が身を恥じ入るばかりです。それは、英和の給食は、単なる給食ではなく「愛餐」なのだということに気づいたからです。もちろん学校案内や説明会でも「愛餐」というフレーズはどなたも一度は耳にされているとは思いますが、真の意味での「愛餐」とはどういうことだろうか、ということに思い至ることはあまりなかったかもしれません。効率的に480人に食事を提供するだけならば、カフェテリア形式や、食堂スペースを確保せずに各教室での配膳方法にする方がはるかに合理的です。しかし、元麻布仮校舎においても効率的なグループ別の給食ではなく、皆が揃ってテーブルにつき、心を合わせて祈り、食卓を囲む「愛餐」という伝統を守ることを教職員は選択しました。共にいただく食卓では、神さまによって愛されている隣人、相手を尊重すること、他者への配慮が大切です。それを一般的にはマナーと呼ぶのでしょうか。食事、給食の時間は日常の一場面ですから、あまり深く考えることは少ないかもしれませんが、東洋英和女学院小学部で提供する給食の時間は「愛餐」です。主の食卓を囲む、一つの家族としての小学部での学校生活に感謝し、これからも大切にしたいと思います。
低学年と高学年でサイズの違う、食堂の椅子は現校舎が完成した時に備えられたMAGNUS・OLESEN社の子ども用椅子。現在では本国デンマークの職人さんが足りず、子ども用の特注椅子は製作できないということで、とても貴重な椅子となりました。修理をしながら大切に使っていきましょう。
小学部長 𠮷田太郎