小学部だより
小学部だより 2024年冬休み号
小学部だより
〜神をあがめるマリアの信仰〜
「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。」
(ルカによる福音書1章46節)
クリスマスまで1週間。今年も残すところあとわずかとなりました。振り返りますと2024年は、元日の能登半島での大地震に始まり、ウクライナ紛争やガザでの虐殺など目を覆うようなニュースが次々と伝えられた1年でした。8月には南海トラフ地震への「巨大地震注意」が発出され、9月には遅々として進まない能登半島の復興に追い打ちをかけるような豪雨災害が続きました。
政治の世界は、トランプ大統領の暗殺未遂の末の再選というドラマが記憶に新しい。東京都知事選挙や政治資金をめぐる解散総選挙。与党が大敗する結果となった選挙戦では、SNS上は批判や誹謗中傷合戦の様相を呈し、ルールの中とはいえ、モラルを逸脱するような選挙のあり方が問われる後味の悪いものとなりました。被災地である能登半島と東京、紛争地域と世界、赤と青…。あらゆる場面で深刻な「分断」を意識させられる1年であったとも感じます。
そんな世界にあっても1年に一度、クリスマスはやってきます。ガリラヤのナザレという小さな村で天使ガブリエルのお告げによって神の子を宿した少女マリア。驚き、戸惑うマリアに天使は「その子は偉大な人となり、いと高き方の子と言われる。」(ルカ1:32)と告げ、さらに「神にできないことは何一つない。」(ルカ1:37)と宣言します。すると、マリアは「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身になりますように。」と応答するのでした。
クリスマスの物語にはいろんな不思議、奇跡があります。たとえば、天使がお告げをしたこと。乙女が妊娠したこと。救い主は赤ちゃんだったこと。星が輝き羊飼いを先導したこと。などなど…。数多くの不思議、奇跡の中で最も大きな奇跡とは、この天使のお告げをマリアが信じたことだと思います。突然降りかかった天使のお告げ。この出来事をマリアは受け止め、「神にできないことは何一つない。」という言葉を自分ごととして信じました。この事実こそがクリスマスの奇跡の始まりだったのです。
ルカによる福音書1章46節以下にある「わたしの魂は主をあがめ」という言葉から始まる「マリアの賛歌」はラテン語でMagnificat(マニフィカト)といいます。この「あがめる(崇める)」というラテン語の「マニフィカト」はギリシャ語では「メガルノ」という言葉になり、これは拡声器、メガホンの語源になるそうです。神を崇める。神を礼拝する。とは、自分の小ささを通して神さまを大きくする。神さまに対抗しようとするのではなく、神さまにすべてをお委ねする。そうした姿勢で祈り続けることで私たちは自由にされます。自己中心な、この世の価値観から解放され自由にされる。王や皇帝たちが神のようになろうとした時代に、神は人に姿を変え、無力な赤ん坊のかたちでイエスさまをこの世にお与えになりました。慌ただしい師走ではありますが、立ち止まり、静かにクリスマスの本当の意味を考えてみたいと思います。
すべての人にメリークリスマス。
小学部長 𠮷田太郎
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