小学部だより

小学部だより 2025年夏休み号
小学部だより
〜自由研究のススメ〜
主に自らをゆだねよ 主はあなたの心の願いをかなえてくださる。あなたの道を主にまかせよ。信頼せよ、主は計らい あなたの正しさを光のように あなたのための裁きを真昼の光のように輝かせてくださる。(詩編37篇4節〜6節)
我が家では、この時期になると決まって悩み始めるのが、「夏休みの自由研究のテーマ」についてでした。約40日間という、まとまった時間に子どもたちの興味や関心をどこまで深掘りできるか。親としても一緒に関わりながら彼女たちの自由研究の課題を一緒に取り組んだことを懐かしく思います。
土から這い出てきて、木の上でゆっくりと羽化する蝉に魅せられた長女は、昆虫好きになり、毎日のように近所の公園へ出かけ、蝉や蝶の昆虫採集にハマり、6年生では「昆虫標本づくり」にチャレンジしていました。蜘蛛の糸で繊維をつくれるか?という実験のために蜘蛛を集めたいと言われたときは参りました。また別の年には、「ウズラの卵から雛をかえす」というプロジェクトは試行錯誤の末、結局は失敗に終わりました。ボルネオ島に家族旅行へ出かけた夏には、姉妹で手分けしながら「オラウータンの保護活動」について、「森林伐採」、「パームやし」のことを調べてレポートにまとめていました。次女が4年生の時には水の学習から「ダム」に夢中になり、いくつかのダムへ父娘でドライブし、ダムカードを集めたこともありました。「補助犬」に興味を持った彼女たちと一緒にアイメイト協会へ見学に行ったことで、我が家に繁殖奉仕犬のクレアをお迎えすることになり、30頭を越えるアイメイト候補犬の出産へとつながりました。低学年の時には稚拙だったレポートも6年生になる頃にはとても秀逸な作品となっていて、子どもの成長を実感し、親としても誇らしい気持ちになったことを覚えています。そんな娘たちも中高生になると、虫好きだったことはお友だちには隠していると言っていましたし、彼女たちの興味や関心はダムやオラウータンからは離れているようですが、今でも自由研究に取り組んだことは親子の楽しい思い出となっています。
さて、このような自由研究の取り組みは思い出づくりだけではなく、学びという意味においても大きな意義があります。アメリカの哲学者で教育学者でもあったジョン・デューイ(John Dewey/1859〜1952)はLaboratory School(のちのシカゴ大学附属実験学校・デューイスクール)での教育実践を通して、現代の学校教育に大きな影響を与える様々な教育哲学、理論を展開しました。特に、2020年の学習指導要領改訂ではデューイの学習理論であるProblem Solving Learning(問題解決学習・Project Based Learningとも呼ばれる)が盛り込まれ、アクティブラーニングという言葉が一般的に用いられるようになりました。私はデューイの数ある教育理論の中で、とりわけ小学生にとって最も効果的な手法として、彼の提唱したLearning by doing(為すことによって学ぶ)ということを小学部の教育実践の中で大切にしたいと考えてきました。これはまさに東洋英和が140年の歴史の中で野尻キャンプや追分寮での夏期学校などを大切にしてきたこととも通じます。点を取る技術よりも、問いを立てる技術を。机に座って傍観するよりも、立ち上がって自分から手を使ってみること。画面上だけでなく、この目で見たり、触れたり、できれば会って握手することを。この夏、苦手教科の克服、積み残し課題の整理など、各教科の宿題ももちろん大切ですが、全学年で、自分で課題を設定し、深掘り、研究するという「自由研究」での学びをお勧めします。
それぞれのご家庭でも、そして学校でも、子どもたちが「自分は愛されている」「大切にされている」と感じられるような声かけや関わりを大切にしたいと思います。学力や結果に一喜一憂するのではなく、子どもたちが努力している過程、挑戦しようとする姿そのものを喜び、励まし合えますように。
小学部長 𠮷田太郎
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