小学部だより

小学部だより 2025年9月号

小学部だより

〜蝶の羽音


天の国はからし種のようなものである。人がそれを取って畑にまくと、どんな種よりも小さいが、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来てその枝に巣を作るほどの木になる。(マタイによる福音書13章31〜32節)

長かった夏休みが終わり、子どもたちが学校へ戻ってきました。記録的な酷暑が続く日本列島でしたが、皆さんはこの夏、ご家族でどのように過ごされたでしょうか。

7月の追分での夏期学校から始まった夏休み。キャンプファイヤーやカレー作りなど様々なシーンが思い起こされます。そんな中で印象的だった軽井沢町の国道18号線での出来事をご紹介します。追分寮からツルヤへ買い出しに出かけた帰り道、信号機の無い横断歩道で、道を渡ろうとする少年に道を譲りました。横断歩道ですから当然、歩行者優先なのですが、少年は小走りで渡り切ったあと、くるりと振り返ってドライバーである私に向かって深々とお辞儀をしてくれたのでした。その姿を見て私は思わず、うわぁって声を出してしまいました。長野県や軽井沢町の小学校の教育なのか、少年のご家庭の躾なのか、いずれにせよ、夏の軽井沢の木々に吸い込まれるように過ぎて行った少年のお辞儀の清々しさに心を打たれました。ああ、こういう事が自然にできる人間に育って欲しいなぁと…。浅間山が美しく映える夏の国道を走りながら、気象学者のエドワード・ローレンツ(1917〜2008)が提唱した「バタフライ・エフェクト(Butterfly Effect)」のことが頭に浮かびました。『ブラジルで蝶がひらりと羽ばたくと、テキサスで竜巻が起きるかもしれない』そんな喩えで語られるこの理論は、小さな出来事が、やがて大きな変化を引き起こすことを寓意的に示しています。私はこの1匹の蝶の羽ばたきを想像する時、イエスさまが語られた「からし種のたとえ」を思い出します。「天の国はからし種のようなものである。人がそれを取って畑にまくと、どんな種よりも小さいが、成長するとどの野菜よりも大きくなり、空の鳥が来てその枝に巣を作るほどの木になる。」(マタイによる福音書13章31〜32節)

私たちの日々の教育や子育てとは、まさにこの「からし種」ではないでしょうか。食事の前には手を洗うこと。お食事のマナー。声の大きさ。身支度の仕方やお風呂の入り方。決められたルールを守って生活すること。気持ちの良い挨拶ができること。目があったら、にっこり笑顔で会釈すること。道を譲ってもらったら、お礼を言うこと。追分寮での夏期学校では「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」が毎年の主題聖句として掲げられます。追分寮での教師らの声掛けや指導はこの聖句を常に意識しながら行われてきました。それら一つひとつはいずれも目には見えない小さな「羽ばたき」です。けれど、その一つひとつが神さまの手の中で、時を経て、子どもたちの心に、そして社会に、大きな実を結んでいく。神さまは私たちのこの「小ささ」から祝福の業を始められると信じます。蝶の羽ばたきのように静かで控えめな羽音、国道18号の少年の清々しさ、私たちの小さな善意の積み重ねが、神の国の平和につながることを信じて子どもたちと向き合っていきたいと願っています。

 

小学部長 𠮷田太郎

 


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