小学部だより

小学部だより 2025年10月号
小学部だより
〜Noblesse oblige〜
受けるよりは与える方が幸いである。(使徒言行録20章35節)
秋分の日を境に、ようやく秋の気配が感じられるようになりました。今週でいよいよ前期も終了となりますが、これから配布されます通知表はこれまでの学習成果を数値化、文章化して記録したものです。紙面では伝えきれない内容、数字だけでないお子さんの頑張りや努力を評価し、各教科の学びの内容についても振り返っていただき、後期へ活かしてください。
さて、大盛況となったEIWAオータム・フェスティバル。イベントの立ち上げ準備から当日の運営まで、細部にわたってのマネージメントなど、実行委員の父の会役員さんを中心に、多くの保護者の皆さんで作り上げた大人たちの本気のお祭りに感嘆しました。数ヶ月にわたってのご準備、心から感謝申し上げます。また、英和の保護者の皆さまの日々の活動、母の会や毎朝の立番などの父の会活動を拝見していますと、私はいつもある言葉を思い起こします。それは19世紀にフランスで生まれた言葉で「Noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ)」という言葉です。本来これは「高貴さは義務を伴う」という意味を持ちます。人は与えられた立場や恵みに応じて、他者のために責任を果たさねばならない、という考え方です。古代からの知恵であると同時に、現代を生きる私たち、そして未来を担う子どもたちにとっても大切な指針となる言葉です。海外のセレブリティや富裕層がチャリティ活動に関心が高く、教会や福祉施設、教育への寄付に積極的なことの背景にはこの思想が大きく影響しているのでしょう。聖書は、この思想に通じる言葉を数多く記しています。イエス・キリストは弟子たちにこう語られました。『人の子は仕えられるためではなく仕えるために、また、多くの人の身代金として自分の命を献げるために来たのである。』(マルコによる福音書10章45節)ここには、「奉仕」こそが真の力であり、愛のかたちであることが示されています。私たちの子どもたちは、それぞれに神さまより大きな賜物を授かっています。健康や知恵、友情、家庭や学校の支え――これらは当たり前のものではなく、恵みとして感謝すべきものです。その恵みを独り占めにするのではなく、他者と分かち合い、社会のために生かしてこそ、「ノブレス・オブリージュ」の精神は真に実を結びます。奉仕の心は、決して大それた行為から始まるものではありません。友人に優しい言葉をかけること、困っている人にさりげなく手を差し伸べること、家庭において自ら進んで役割を担うこと。それぞれのコミュニティの中で喜びを持って貢献しようとすること。こうした小さな実践の積み重ねが、やがて大きな奉仕の心を育みます。そしてそれは、聖書の教えにある『受けるよりは与える方が幸いである』(使徒言行録20章35節)という言葉の実践にほかなりません。
東洋英和女学院小学部は、子どもたちに「神さまのために 人のために」という「敬神奉仕」を身に纏った人になって欲しいと願い教育活動を続けてきました。学びの場とは、単に知識を蓄えるところではなく、神さまからいただいた賜物を他者のために用いる訓練の場であるべきです。そしてその教育は、保護者の皆さまをはじめ多くの方々の祈りとご支援によって支えられてきました。
小学部長 𠮷田太郎
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