小学部だより
小学部だより 2026年2月号
小学部だより
〜女子教育と平和教育〜
平和をつくり出す人たちは、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる。
(マタイによる福音書5章9節)
先日、キリスト教学校教育同盟の小学校代表者研修会で福岡、長崎を訪れました。長崎では潜伏キリシタンの人々が守り続けた信仰、また原子爆弾による甚大な被害、そして復興の歩みについて学びました。上質な良い学びができたことの感謝の余韻と共に、平和についてこれまで以上に積極的に考え、子どもたちに伝えていかなければならない使命のようなものを強く感じました。
創立142年目を迎える2026年。創立以来、東洋英和女学院小学部が大切にしてきたのは、知識や技能の修得にとどまらず、「人はどのように生きるのか」を問い続ける教育です。その根幹にあるのが、キリスト教教育であり、「敬神奉仕」という学院標語に表される「神さまのために、人のために」という姿勢です。効率や成果、即時の結果が重んじられがちな現代にあっても、この静かな価値観が色あせることはありません。女子教育の意義は、子どもたちが将来、社会のさまざまな場において主体的に考え、責任ある役割を担っていくための土台を築くことにあります。それは、声の大きさや立場の強さによって物事を動かす力ではなく、必要なときに必要な言葉を選び、対話を通して合意形成をしていく力を育むことでもあります。自らの尊厳を大切にされていると知るからこそ、他者の尊厳にも心を向けることができる。その学びは、幼い時期だからこそ、深く根づいていきます。
戦後八十年を経た今、平和とは何かをどのように次の世代へ伝えていくのかが、私たちに改めて問われています。聖書は、「平和をつくり出す人」の幸いを語りますが、それは争いのない状態をただ享受する人のことではありません。むしろ、対話を重ね、時間をかけ、時に不都合や手間を引き受けながらも、共に生きる道を探ろうとする人の姿を指し示しています。近年、社会や政治の場において「決断力」や「速さ」が称揚される場面を目にすることがあります。しかし、十分な対話や説明を欠いたまま下される大きな決定は、かえって人々の間に不信感や分断を生むことも少なくありません。聖書はまた、「相談しなければどんな計画も挫折する。参議が多ければ実現する。(箴言15章22節)」と語ります。熟議と助言を尊ぶこの知恵は、現代においてもなお、私たちが立ち返るべき指針ではないでしょうか。
子どもたちは学校生活、とりわけ人間関係において様々な不都合に直面することがあります。意見の異なる友だちの話を最後まで聞くこと、自分の考えを言葉にし、相手の言葉を受けとめることは、私たち大人が思う以上の勇気と忍耐が必要です。子どもたちは、そうした経験を重ねる中で、平和が一足飛びに実現するものではなく、日々の選択と関わりの積み重ねによって形づくられていくことを、経験的として学んでいきます。女子教育と平和教育は切り離されたものではありません。自分の良心に基づいて考え、他者の声に耳を傾け、対話を通して社会に仕えていく生き方を育てること。その営みこそが、どの時代、どの状況にあっても揺るがない平和の基礎となります。これからも学校と家庭が共に歩みながら、平和を「語る」だけでなく「共に生きる」ことを、改めて確かめ合う時となることを願っています。
小学部長 𠮷田太郎
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